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Hatching Twitter

東京が雪にすっぽり包まれた週末、久しぶりに1日まるまる家にいて、ソファに張り付いて本を読み続けていた。手を付けていなかったHatching Twitter. Twitter創業当時の創業者間の確執ドラマをとりあげた本。

まず感じたのは、サンフランシスコへのノスタルジー。自分が住んでいた時代のサンフランシスコの、住んでいた場所から徒歩圏内で、サービスが開発され、よくでかけていたレストランやカフェで節目の話し合いがされていたことは、妙に懐かしくて恋しく、まるで一つ一つのシーンが映画のようにくっきり目に浮かぶ。Brick house でのDinner, Blue Bottleでのミーティング。映画化が待ち遠しい。

Twitterのオフィシャルローンチは2006年夏のLove Parade(ベルリンを発祥とするレイブの祭典)だったそうだが、会場には私も友人に連れられてとことこ出かけてて、暑くてぐったりしてすぐ帰ってきて球場の向かいのバーでビールを沢山飲んだなあ。なんて。ちなみに、そのローンチは大失敗で、酔っぱらいに絡まれた後のCEO Jack Dorseyが頭を打つ大怪我をして流血沙汰になっていたらしい。



Twitter はその後、2007年のスタートアップイベント South by Southwest で注目を浴び、本格的にWebサービスとして認知される。セレブリティの参加、選挙活動への起用、その役割は一気にパブリックインフラとしての役割を帯びる。買収のオファーも次々に舞い込み、その価格もうなぎのぼりとなる。一番最初に持ち込まれたのはYahoo!からの12百万ドル、経営陣は一笑に付したらしいが。

一方、長年売上はほぼゼロ。マネジメントらしいマネジメントはないまま、サービスは伸び続ける。自分が今までの仕事や勉強の中で学んできた「あるべきマネジメント像」と全くかけ離れた集団が、この3兆円の時価総額の企業を最近まで動かしてきた。IPOにしてなお、収益性が疑問視されるこの会社、同じ期間にFacebookが「大人がかかわる会社」に衣替えする間も、 no adult supervison  という状況で成長してしまう。

忘れられた創業者、さみしがりやのNoah Glass. ともかく友人と「つながっていたい」という彼の心がTwitterというアイディアを走らせたように思える。彼が創業メンバーのなかから浮き上がって寂しい夜、ひたすらTwitterに向かったのは、孤独な若者がSNSに依存する姿とかぶる。潜在的なユーザーと一番近しい人、だからこういうものを創りだしたのかもしれない。

巨大なエゴとプライドをかかえた、初代CEOのJack Dorsey . 彼はCEOの座を追われてからもずっと自分がTwitterの顔であるかのように振る舞い、華々しくメディアで取り上げられるようになったTwitterの立役者として世間の注目を集めたが、自分を追い立てたかつての仲間への怨嗟の念をその間募らせていた。でも、素人目にも、エンジニアリングの責任者でもありながら、サイトのバックアップつくってなかったっていうのは、まあ、投資家が危機感を募らすのに十分だっただろうな、とは思う。

偉大なビジョナリーにしてナイーブ過ぎたCEO、 Evan Williams. Bloggerの創業者としてシリコンバレーの名士だった彼が、Twitterの初期の資金を支え、業界の注目を集めた。一方、彼がお金には恬淡としており、意思決定がなかなかできないCEOであったがゆえ、Twitterのマネタイズは遅れたのだろうし、友人や身内以外をなかなか信頼出来なかった彼は、反対を押し切って採用した友人である にDick CostoloにCEOを譲らされる形で役職をとかれる。

一人ひとりの創業者が会社を追われるシーンの描写はリアリティに飛んでおり、息が詰まる。ふっと、今まで自分が投資先の会社で関わった、目にした、幾つもの退陣劇を思い出す。会社を経営することは人の問題とどっぷり向き合い続けることでもあると。会社の成長に必要な変化だったと、自分の投資家脳は納得するが、自分が新しく会社を作るという試みを始めてみると、はじき出されたメンバーの気持ちを追ってしまう。

会社は加速度的に成長し、ビジョンと夢はあるけれどその成長についていけなかった創業者達がはじき出され、友情は永遠に失われた、という読後感を持ったわけだが、さて彼らは最近何をしているんだろうな、と思うと、創業メンバーの一人であり、Ev Williamsの親友でもあったBiz Stoneの新会社 Jelly Fishに、Ev Williams だけでなく、最後あれほど反目したはずのJack Dorseyも出資 している。資産家となった彼らには昔なじみの会社にエンジェル投資をすることくらいは大した話ではないのかもしれないし、昔のことは昔のこととして、たまにビールを飲むくらいの仲間には戻っているのかもしれない。スタートアップというカオスの中で何が本当に起きたのかは、やっぱり当時者じゃないとわからない、ということなのかもしれない。
by lat22n | 2014-02-24 23:04 | Read


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