不恰好経営とLean In と 「こととひと」

あちこちで話題になっていた南場さんの著作「不恰好経営」、Kindle化されたので読むことができた。Kindle万歳である。最近、本はできるだけ電子版のものをかって荷物を増やさないように心がけているので、先月日本に一瞬帰っていた間も買って帰るのを躊躇したのだが、まってよかった。

ちょうど、発売後のタイミングであったという、日経主催のグローバル・ウーマン・リーダーズ・サミットでの彼女のスピーチのログが話題になっていて、その同じカンファレンスでのシェリル・サンドバーグの発言と対比してなかなか興味深かったことと、発売と同時に読んだけれど感想がまとまってなかった"Lean In"と、今回読んだ「不恰好経営」について、まとめてみた。




南場さんの著作は大変面白く拝読した。私はブログのころから、彼女の軽妙な文体がとても好きだ。この著作もさばさばした気取らないお人柄と会社・従業員への愛がぎゅっと詰まっていて、ライブ感もあり、ちょっとほろっとくる部分もある。ベンチャーは事業がピボットするので、大事なのは事業モデルでもなんでもなく結局は人、ということを友人のVCのひとがよく言うが、なるほど、DeNAはすばらしいチームで走ってきたんだな、と思う。

今まで、日本の女性経営者や、リーダー的立場にいる人が媒体に取り上げられられるとき、ビジネスとしての成果よりも、女性としてキャリアをどう構築したか、という、ひととしての私、が前面に出る印象が私にはあった。まだ少数派なので、いったいどうやってキャリアを構築したかのストーリーは興味をもたれやすいし、女性は、視野が広くて欲張りというか、多様な価値観のトータルで自分を満足させる傾向があり、一番大事なのは仕事面だけの成功ではなくて「自分がトータルでいいかんじどうか」であるケースは多い。それがいいともわるいとも私は思わない。

が、南場さんという人には、そういう「私のストーリー」は関係なく、ただ事業の成功だけを目指したのだなぁ、と思う。上場企業の社長としては、そうあるべきだ。

その辺は、講演会での「ひとではなく、ことにむかうちから」というメッセージとも一貫している。その言葉にはものすごく説得力があり、そして、私自身も、あいたたた、とおもった。
確かに、コンサルだ金融だ、という業界に身をおいていると、このプロジェクトでの自分のバリューはなんだ、仕事における自分のやりがいはなんだ、自分、自分、自分、、、となってしまう瞬間がある。キャリアを一生懸命考えている若手はこのトラップにはまりやすいのだろうし、まあ、ぶっちゃけ、自分もかなり長くそういう恥の時代を経験している。
今でも、いまいち成果が出せていないときほど、自分に意識がいってしまっている傾向があると自覚する。その一方で自分がたりをしない、ともかく物事を成し遂げることだけしか頭にない、という人が数人ぱっと頭にうかぶし、彼らは概ね仕事において成功をしているか、成功をしつつある。自分も、仕事がうまくいくのは、ともかく「ことにむかっているとき」、だとおもう。

この本はむしろ男性たちから良い評価を得ているということと、上記彼女のスピーチのログを読んで思ったのは、
・女性も、男性と同様にビジネスで成果をだせるし、その成果に対しては男性も惜しみなく評価をする、という意味で世の中は大変フェアである。
・で、上記を達成するには、男性と同じ条件・土俵で成功するしかない
という、大変当たり前のことだった。

一方で、女性の社会進出をもっともっと、という、「ひと」に注目した本がLean inである。
Lean Inはいい本だと思う。ここまで成功している人が、フェミニストというレッテルを貼られる危険をおかし、ジェンダーにフォーカスした発言をするのは勇気がいっただろうし、私も、忘れてたけどなんかいろいろあったなぁ、というのを思い出した。一連のこの本の発売イベントでの彼女の発言も一貫していて、もっともっと女性は積極的に世にでるべきで、そのための障害をなくしていくべきということ彼女は説く。政府がどういう役割を果たすべき、というのが一切でないのはアメリカ人らしく、まずは女性自身ががんばろうよ、という激励がメッセージの主体である。

彼女の本を読んで、男性と同じ条件で働いていて、自分が女性であるがゆえのちょっとした違和感を抱いたことがない女性はいないのだと思った。これほどまでのキャリアを歩んでいる人でもそうなんだ。。。と。私にしても、同行を遠慮した女性がいる店での商談について後できくこととか、いまだに日本の地方の会社の社長さんなどには「お嬢さん」とか言われること(この年になるともう、大爆笑である)とか、パートナーを頂点とした男性だけの、○○組と呼ばれるような「仲良しチーム」を遠くから見ることとか、思い出せばいろいろある。たいしたことではないし、「自分は女性だからこんな損をしてる」ってなんかプロフェッショナルじゃないし、と受け流し、女性だから覚えてもらいやすいとかそういうメリットとあわせれば相殺だ、と自分の中で辻褄をあわせてきて、それは、自分のキャラクター・個性とできる範囲だと思っているのだけど。

むしろ、この本で繰り返し書いてある多くの女性に見受けられるスタンス「一歩さがる」「自分に自信がない」のほうがどきっとした。自分が女性として成長する間に少しずつ身につけてきたもので、それが仕事上マイナスに働いてしまったことはおそらくある。
本当に小さいころの私は、まっこうから年上のガキ大将にはむかうような、大変気の強い子供だったのだが、そのような闘志は、なんとか真っ当な娘に育てたいという親の真摯な教育と、成長するにつれ周囲を見渡し、私も「女の子らしく」見られたいという欲も生じたことで(笑)、マイルドになったと思う。女性としてはそれでよかったんだろうが、仕事上はもう少し、アグレッシブになれないものかと、特に、今のPEという肉食獣が跋扈するような世界に入り思うようになった。

だから、あらためて、意識して手をあげろ、勇気を出せ、という、シェリル・サンドバーグのメッセージは、大概の優等生気質な女性に対し、とても正しい、と私は思っている。
この本に対し、こんな成功者で浮世離れした人がワーキングマザーのような顔をして何を語る、というような評価が結構アメリカでは多かったようだが、そこまで階層化していない日本においては、彼女の言いたいことはすんなり伝わるのではないかな。

ただ、この本を読んでよかった、感銘を受けた、という男性は少なくとも私の周りにはいない。日本版も出て数週間たったはずだが、男性のレビューを見たことがない。こちらはビジネス書というより、啓蒙書であり、どんなリベラルで男女の役割にニュートラルな人でも、女性の社会進出に強い興味のある男性はあまりいないよね。ってことだろう。ま、それもそうだよね。

ひとつの企業を育て経営者としての立場をつらぬいた南場さんも、更なる女性の勇気を促すシェリル・サンドバーグのメッセージも、私は等しく素敵だと思う。多くのすばらしい「同姓の憧れの星」がいるわれわれ世代のキャリア女性は恵まれている。

・・・が、この2人を並べた講演会がどれほど迷走したか、は、なんとなく想像がつく。ハーバードでマッキンゼーなキャリアウーマンって大雑把なくくりで話が一致するような時代ではもうないってことですな。
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by lat22n | 2013-08-11 03:46 | Think


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